1-2. 地震学と測地学

京都大学大学院理学研究科 福田洋一

地震学と測地学は, いずれも固体地球物理学の一分野としてお互いに大変密接な関係にある. 地震学と測地学の違いを特徴付ける1つの視点として, 対象とする現象の時間スケールの違いがあるかもしれない. 現象としての地震は, 地面の振動, すなわち固体地球そのものの振動であり, 通常の地震では, その周期は数秒より短く, 長周期地震あるいは地球の球としての固有振動そのものである地球自由振動にしても, その周期はせいぜい数十分である. 一方, 測地学が対象とするのは, 地球の定常的な形(周期無限大-DC成分)から, 短周期でも, 地殻変動(〜数十年), 地球回転(14ヶ月), 地球潮汐(年〜半日周)などで, 一般に地震学で扱う周期より長周期の現象を対象としていると言えなくもない. しかしながら, いわゆる「ゆっくり地震」や地殻変動が, 地震学あるいは測地学, どちらの研究領域に属するかといった議論は全くナンセンスであろう. 扱う現象の周期性だけで研究分野が区別できるはずがないのである.

人間生活により直結した地震予知の立場からも, ひずみ計や伸縮計による地殻変動観測や水準測量などの測地測量, また, GPSを筆頭に, VLBI, SLR, SARなどの宇宙測地技術は欠かせないものとなっている. さらに, 活断層調査のように比較的浅部から地球中心核の構造まで, 地球の内部構造を知ることは地震学, 測地学, あるいは固体地球物理学に共通した重要な研究課題であり, 重力探査による地下密度構造の推定は, 地震観測による地震波速度構造の推定と同様, 地球内部の物性的な性質を知る最も基本的な手法である. このように, さまざまな観測手法においても, 地震学と測地学は緊密な関係を持っている.

第3部 電子基準点

第3部 ゆっくり地震

第3部 Hi-netによる微動とゆっくり地震

新第3部 GNSS-TEC法でみる地震と火山噴火

新第3部 PALSARがもたらしたもの-地震編-