目次 | 第3部 応用編 | SELENE計画
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1.SELENE計画 2.測地ミッション 3.月の裏側の重力観測 4.3次元計測 5.全球地形観測 6.何がわかるか

SELENE計画 − VLBIとドップラーによる3次元計測

 SELENEでは,相対VLBIによって2つの子衛星(VLBI用電波源搭載のリレー衛星とVRAD衛星)の間の角距離を測定し,衛星の軌道ならびに月の重力場を求める.これまでは,軌道や重力場ドップラー観測によって求められていたが,ドップラー観測では地球から月を見る視線方向の衛星の速度しか観測されないという欠点がある.たとえば,月の縁辺部(経度±90°付近の地球から見て月の縁の部分)にあるクレータの真上を衛星が通るとき,その軌道は鉛直方向に(地球から見ると視線と直角方向に)摂動を受け,ドップラー観測ではその軌道の変化を観測することができない.この感度の不足分を補うのがVLBI観測である.VLBI観測では視線と直角方向の衛星の位置の変化を観測することができる.ドップラー観測とVLBI観測を組み合わせることによって,3次元の軌道決定ならびに月の重力場の推定が実現する(図1参照).さらに,リレー衛星とVRAD衛星は人工的な軌道の修正や姿勢の変更を行わないために,1年以上にわたって長期的な軌道の変化も観測することができ,長波長の重力場や太陽輻射圧等による擾乱の影響を詳しく調べることができる.




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