目次 | 第3部 応用編 | 荷重変形
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1.荷重変形 2.大気による荷重変形 3.陸水による荷重変形 4.グローバルな荷重変形 5.海水の荷重 6.荷重変化と地震

荷重変形 − 陸水による荷重変形

 雪氷や河川,湖沼,土壌水分などの陸水も地表における大きな荷重を担っている.そのなかで雪氷,ダムの貯水,土壌水分などが季節的に変動するが,我が国で最も重要なのが積雪荷重の季節変動である.わが国の日本海側は世界でも珍しい雪国である.シベリアから吹く冷たい冬の季節風は日本海の上空を通過する際にたっぷり水蒸気を溜め込み,日本列島の脊梁山脈にぶつかって雪として放出する.北陸地方から東北地方日本海側にかけての山沿いでは,深さ何mといった雪は珍しくない.

 新雪の比重は0.1程度だが,上に降り積もる雪に圧縮されて徐々に重くなってゆき,雪どけの頃には平均密度は0.4〜0.5g/cm3くらいにまで増える.深さ数mという雪深い地域での積雪荷重は水に換算して深さ1mほど,つまり1m2あたり1トンもの重さになる.

 最近のGPS衛星を用いた観測では,雪の荷重で日本列島が凹み,かつ縮む様子がはっきりととらえられている.雪の多い日本海側の山沿いを中心におよそ1cmの沈降,また雪の重みに引っ張られて日本列島は幅が3〜4 mm縮む(図3).縮みは雪の少ない温暖な地域では小さくなる.荷重グリーン関数を用いると荷重の大きさと分布から地球の変形が計算できる.逆に変形を観測して未知の荷重を求めることも可能である.


図3. 東北地方の象潟(秋田県)と鳴子(宮城県)を結ぶ直線距離の季節変化.点々はGPSで実際に測った値,黒い線は雪の量や冬の大気圧の増加などの荷重の変化から予測される距離の季節変化.



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