目次 | 第3部 応用編 | 海洋潮汐
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1.海洋潮汐とは? 2.人工衛星による観測 3.モデル化 4.月・地球系進化

海洋潮汐 − 人工衛星による海洋潮汐の観測

 潮汐の研究の歴史は古く,潮汐が月・太陽の引力によって引き起こされる事をニュートンが明らかにしたのはなんと1687年までさかのぼる.潮汐による海面の上下を観測する験潮所の中には100年以上の歴史を持つものもある.ところが,験潮所の多くは海岸線に沿って設置されており,海底圧力計を利用した外洋の潮汐観測も数が限られている.さらに,個々の観測の質のばらつきが大きい.このような事情から,全球的な海洋潮汐の場がよく知られるようになるには,海面の高さを測る測器と搭載した人工衛星の登場を待たねばならなかった.

 このような衛星海面高度計は1970年代から登場しはじめ,徐々にその観測精度が向上していった.特に,1992 年に打ち上げられたTOPEX/Poseidonという衛星は,地上1336km上空から海面の高さを数cm という驚異的かつ一様な精度で測ることができ,このデータを用いた海洋潮汐の研究が大幅に進んだ.図2は,TOPEX/Poseidonの軌道を地上に投影したものである.繰り返し軌道を取るように制御されており,約10日かけて図2の軌道を描き,同じ場所に戻ってくる.すなわち,TOPEX/Poseidonは,軌道直下の海上に固定されたある点について10日に1回海面高度データを計る「宇宙からの験潮システム」とも呼べるものである.


図2. TOPEX/Poseidonの軌道.



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