目次 | 第3部 応用編 | VERA−VLBI
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1.VERAプロジェクトとは 2.どんな観測? 3.相対VLBI法 4.測地観測 5.VERA局の変位 6.位置天文学・天体物理学

VERA−VLBI − 位置天文学.天体物理学の立場から

 VERAは,測地学的な研究のみならず,位置天文学・天体物理学の立場から野心的なプロジェクトとして期待されている.天文学の中で非常に基本的なことでありながら,天体までの距離を正確に求めるということは実はかなり難しい問題となっている.天体までの距離に誤りがあると,その天体の質量見積りの誤り,ひいては物理理論の誤りとなってしまう.天体までの距離を測定するのに,何らかの仮定を置かずに直接測定できる唯一の方法が三角視差による方法である.VERAでは,銀河系内の晩期型星の周りや星形成領域などにあるメーザ電波源と,クェーサーと呼ばれる非常に遠方にある電波源を同時に観測し,メーザ源の三角視差と固有運動を精密に測定することをプロジェクト観測の最大の目標に上げている(測定のイメージ,図13).メーザ源の距離と3次元的な動きをとらえることにより,銀河の3次元構造や,銀河系内の隠れた質量分布(ダークマター)を明らかにする.

 遠方の銀河の距離は,ミラ型変光星の周期光度関係などから求められている.まず銀河系内のミラ型変光星の距離を精密に求め直せば,遠方銀河の距離もこれまで以上に正確になってゆく(宇宙距離尺度の精密化).VERAで進めている年周視差の観測は,ひいては「宇宙の大きさ」を正確に求めること,宇宙論にも関係してくる研究である.

 VERAの初期成果としては,2天体同時観測による初フリンジ検出(Pub. Astron. Soc. Japan, 55, 57-60, 2003),W49N水メーザ源のバースト現象の観測(Pub. Astron. Soc. Japan, 56, 15-18, 2004)などがある.


図13. VERAによる三角測量のイメージ.地球が太陽の周りを公転しているので,電波源の位置は季節によってわずかながら変化する(年周視差).VERAでは電波源の位置を正確に測ることにより年周視差を求め,電波源までの距離を求める.



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