目次 | 第3部 応用編 | Hi-netによる微動とゆっくり地震
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1.NIED Hi-netの傾斜観測 2.深部低周波微動 3.微動と同期した傾斜変化 4.沈み込み帯での巨大地震発生サイクルへの影響 5.カスカディア沈み込み帯での類似現象

Hi-netによる微動とゆっくり地震 − NIED Hi-netの傾斜観測

 防災科学技術研究所(NIED)では,日本全国の詳細な微小地震の分布やその活動を監視する目的で,高感度地震観測網 Hi-netの整備・運用を行っている(NIED Hi-net).Hi-net観測点では,地表付近で生じる人為的なノイズを極力避けるため,標準的には100mのボーリング孔を掘削し,その底部に地震計などを搭載したユニットを設置している.このユニットには,上述の高感度地震計(短周期・3成分)の他に,大きな地震時の振動も飽和することなく記録するための強震計(3成分)と,より長い周期の振動も記録可能な高感度加速度計(水平動2成分)も搭載されている.

 この高感度加速度計は,通常の地震計と同様に,内部に振り子を持っている.そして,振り子の変位を検出し,電子回路を介して地動の加速度に相当する信号を出力するようになっている(サーボ型加速度計).このセンサーはDC成分まで十分な感度を持っており,その信号は地盤の傾斜を示す.このため傾斜計とも呼ばれる.このセンサーは1×10-9[radian]よりも小さい角度の変化もとらえることができるように設計されている.

 このようなセンサーを持つ観測施設は,2004年7月現在で全国に約670点設置されており,観測点間隔約20kmの稠密な観測網を実現している.そこで得られた記録はほぼリアルタイムに茨城県つくば市のNIED内にあるデータセンターに転送されている.


関連Webサイト
防災科研Hi-netホームページ

Hi-netのホームページ内「地震の基礎知識とその観測」の紹介ページ


参考文献
佐藤春夫,高橋博,山本英二,福尾信平,上原正義,寺沢康夫(1980):孔井用傾斜計による地殻傾斜観測方式の開発,地震2,33,343-368.
Okada, Y., Kasahara, K., Hori, S., Obara, K., Sekiguchi, S., Fujiwara, H., and Yamamoto, A.(2004):Recent progress of seismic observation networks in Japan -Hi-net, F-net, K-NET, and KiK-net-, Earth Planets Space, 56, xv--xxviii.



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