目次 | 第3部 応用編 | Hi-netによる微動とゆっくり地震
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1.NIED Hi-netの傾斜観測 2.深部低周波微動 3.微動と同期した傾斜変化 4.沈み込み帯での巨大地震発生サイクルへの影響 5.カスカディア沈み込み帯での類似現象

Hi-netによる微動とゆっくり地震 − 深部低周波微動

 前述のように,NIED Hi-netはこれまでにない高感度・高密度な地震観測網であり,これによって微小地震に対する検知能力は格段に向上した.さらに,従来の地震観測網では見いだすことができなかった自然現象も世界で初めて発見された.それが,西南日本の沈み込み帯で発生している深部低周波微動である(Obara,2002;小原,2003a,b).

 西南日本の深部低周波微動は次のような特徴を持つ.(a)長野県西部から豊後水道に至る長さ約600kmの範囲に存在し,沈み込むフィリピン海プレートの走向と平行で帯状に分布する.(b)微動源の深さは約30kmである.(c)約10km/dayの速度で微動源が移動する場合がある.(d)微動は帯状領域内で均質に分布するのではなく,活動が活発な数ヶ所のクラスターが存在している.(e)それらのクラスターの中には周期的に活動が活発化するものがある.(f)近地地震・遠地地震に微動がトリガーされる場合がある.

 火山活動に関連して低周波地震や微動といった現象が観測されることはよく知られている.これらは,火山の地下におけるマグマ・熱水などの移動等が関与した現象であると考えられている.西南日本の深部低周波微動は,これら火山性の地震動との類似性やその移動性から,その発生には何らかの流体が関与していることが示唆される.


関連Webサイト
Hi-netのホームページ内「西南日本に発生する深部低周波微動の活動概況」の紹介ページ


参考文献
Obara, K.(2002):Nonvolcanic Deep Tremor Associated with Subduction in Southwest Japan, Science, 296, 1679-1681.
小原一成(2003a):深部低周波微動の時系列的特徴 -トリガー現象と周期性-, 地学雑誌, 112(6), 837-849.
小原一成(2003b):西南日本沈み込み帯に発生する深部低周波微動, 物理探査, 56(6), 415-425.
鎌谷紀子, 勝間田明男 (2004):火山から離れた地域で発生している深部低周波微動・地震 -その分布と発生原因-, 地震2, 57, 11-28.
Katsumata, A., and Kamaya, N. (2003):Low-frequency continuous tremor around the Moho discontinuity away from volcanoes in the southwest Japan, Geophys. Res. Lett., 30(1), doi:10.1029/2002GL015981.



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