セッション6報告
先端の地殻変動研究における宇宙および地表観測技術


セッション6-1 地殻変動と地震

 セッション6-1は,シンポジウム3日目の午前中にB会場(CR102号室)で口頭発表が行われた. そのあと引き続きポスター発表者による簡単な口頭説明がおこなわれ,ポスター会場(CR202号室)でポスター発表が行われた.

 口頭発表は招待講演1件を含めて8件行われ(当初予定のうち3件がキャンセル),9件のポスター発表(当初予定のうち5件がキャンセル)が実施された. 発表者も含めてセッション参加者は約140名ほどで,もっとも多かったときには会場の席がほぼ埋まった.

 発表内容は,広範囲におよび,世界各地域からの発表が行われた.その地域は,米国カリフォルニア州,インド・マハラシュトラ地方,エジプト・アスワン地方およびカイロ地方,コスタリカ・ニコヤ地方,国内の関東・東海・伊豆諸島・近畿・四国・九州の各地方に及んだ.また,理論的な考察に関する発表も行われた.

 観測手法としてはGPSと共に,干渉SAR・光波測距・VLBI・地下水観測などを取り上げた発表も行われた. 観測対象は,プレート内変形・プレート境界部の地殻変動・非地震性すべり・スローイベント・断層や大地震想定域での地殻変動モニタなどにわたった.

 特に,GPSと干渉SARとを組み合わせた断層域の定常変動モニタは,今後世界各地で試みられるようになれば,地殻変動に関する時間・空間域共に稠密な新しい知見を得ることが予想される.また,従来行われてきた三角測量・光波測距測量・VLBI観測とGPSによる測量や連続観測網のデータを組み合わせることにより,長いタイムスパンにわたって地殻変動の履歴が評価される手法が紹介されたことも,興味深い発表であった.

島田誠一


セッション6-2 火山活動,上下変動,ほか

 セッション6-2は,シンポジウム4日目の午前中にB会場(CR102号室)で口頭発表が行われた.そのあと引き続きポスター発表者による簡単な口頭説明がおこなわれ,ポスター会場(CR202号室)でポスター発表が行われた.

 口頭発表は招待講演1件を含めて8件行われ(他2件はキャンセル),15件のポスター発表が実施された.

 口頭発表では,12分の講演時間+3分の質疑時間(招待講演は,27分の講演時間+3分の質疑時間)では情熱にみちた発表と熱心な質疑応答でしばしば時間オーバーとなったが,2件の発表キャンセルがあったため,全体的にはほぼ時間通りに終了した. 発表者も含めてセッション参加者は約100名ほどで,会場の約6割の席が埋まった.

 ポスター会場では当セッションの15件のポスターのほか,セッション5およびセッション10の9件のポスターも掲示され,1時間30分の掲示時間が終わっても熱心な議論が続いていた. 入れ替わり立ち替わり多数の参加者がポスター会場訪れ,実数は把握できないが,シンポジウム参加者の大多数が会場を訪れたと推測される.

 発表内容は火山活動のモニタリングにGPSを使用するものが最も多く,11件(06-29, 06-32, 06-33, 06-34, 06-35, 06-40, 06-41, 06-42, 06-43, 06-44, 06-49など)となっている. しかし,GPS単独ではなく,EDM,水準測量,傾斜計等の従来の手法によるデータも使って火山解析する例が多かった. これは,GPS受信機の価格,消費電力等の問題がまだ解決されていないためであろう. しかし,太陽電池や衛星電話/携帯電話使った火山観測用のシステムの発表(06-35, 06-36)もあり,今後の火山観測にGPSがさらに多用されていくであろう.

 また干渉SARを火山活動のモニタリング使う例(06-30, 06-31, 06-37)や,GPSと干渉SARを合わせて解析する例(06-27, 06-38, 06-39)もあった. GPSの時間分解能,干渉SARの空間分解能の良さを生かした解析が今後のスタンダードになるであろう.

 また,火山の早い地殻変動を準リアルタイムに捉えるために,解析にキネマティックの手法を取り入れた発表(06-33)もあり,新しい試みとして注目を集めた.

 火山観測以外では,水準測量データを解析した発表(06-47, 06-48),験潮記録とGPSの接続観測の発表(06-46)もあった.海洋潮汐をGPSの上下成分の変動から検出した発表(06-45)も注目を集めた.

 本セッションではキャンセルが2件あり,発表時間の余裕ができたため,このセッションのchairmanの一人であるFrank Webbにより,このシンポジウム直前の16日にアメリカカリフォルニア州で発生したHector Mine Earthquake(M7.1)の報告があった. 特に,当日朝に会場に設置されたインターネット端末で入手した,出来立ての 干渉SARの画像(http://topex.ucsd.edu/hector/)示し,宇宙測地学の有効性を 示すとともに,インターネット時代を象徴する報告が行われた. また,マルチメディアプロジェクタを使った口頭発表も2件あった.

松島 健


Home
English
Program
Summary
Session 1
Session 2
Session 3
APSG
Session 4
Session 5
Session 6
Session 7
Session 8
Session 9
Session 10
Session 11
Session 12
Session 13
Session 14