セッション8報告
GPSの電離圏研究への利用と太陽活動度極大期のGPS観測への影響


 GPSを用いた電離圏現象の観測と電離圏がGPS電波に与える影響について17本の発表が行われた。

 招待講演としてHernandez-Pajares氏によって"Tomographic ionospheric determination with LEO and ground GPS data at global scale"という題目で伝搬経路に沿った積分量であるtotal electron contentのGPSによる観測から、3次元の電子密度分布へ変換するアプローチのレビューがされた。 低軌道衛星(LEO)の利用も含め、ionosondeなど他の電離圏観測手法と組み合わせた手法などが紹介された。 また、IGSにおいて進められている電離圏データの標準形式IONEXについての紹介もなさ れた。

 ついでLangley氏によって"A review of ionospheric effects on GPS"として、電離圏のGPS電波に与える影響のレビューがされた。電離圏内の小スケールの密度の構造によって引き起こされる、シンチレーションによってcycle slipやlockの消失が起ることが示され、高緯度領域におけるその発生頻度分布などが示された。

 以上の二つのレビュー講演に続き9本の口頭発表と6本のポスター発表が行われた。 ベルギー、ロシア、中国、台湾、日本、アジアー太平洋域、それぞれの地域におけるGPSを用いた電離圏現象の観測が報告された。ベルギーにおける、ほぼ 1 solar cycleにわたるGPSデータの結果は太陽活動度によって、電離圏内のtraveling ionospheric disturbance(TID)などの出現頻度がどのように変動するかが示された。 また、いくつかの地域において、アイオノグラムなどの電波観測や全天カメラなどの光学観測との同時観測が展開されていることも報告された。多くの地域で数百kmスケールの電離圏内の構造であるTIDの解明にGPSの観測網が有効であると示された。 また、日蝕に伴う大気重力波による電離圏変動についても、GPS受信機網によるその観測 の可能性についての議論がなされた。 また、受信機の形式によるシンチレーションによる影響の受け方の違いなどの、電離圏の擾乱がGPS電波に与える影響についてもいくつかの発表があった。50Hzと高いサンプリング レイトを持つL1波の受信機による電離圏シンチレーションの出現分布とその特性の観測の報告もなされた。

斉藤昭則


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