セッション7報告
地球環境および地球規模の海水準変動監視へのGPSの応用


 本セッションでは、GPS の応用のひとつとして、地球環境問題への応用、海水準変動をテーマとし、上記の題で講演を募った。 講演数は、招待講演を含め当初口頭発表が13件、ポスター発表(口頭による要約発表付き)が 5件の、計18件の予定であったが、口頭発表で事前のキャンセルが一件(07-03 C.K.Shum 他)と、当日のキャンセルが一件(07-05 J.Wang 他)があり、最終的に計16件の発表となった。 また、ポスター発表で著者本人は欠席したもののポスターの展示がなされ、同僚により要約の代読がなされたものが一件あった。 ポスターの完成度が高ければ、本人不在でも研究内容を十分紹介できる例になっていたようである。

 本セッションでの発表をおおまかに分類すると、postglacial rebound と水準変化に関する発表(07-01、02、11、15P)、GPSによる潮位変化の観測(07-06、09)、あるいは海面高の新しい測定方の開発(07-07)、地域的なネットワークや検潮所でのGPS観測に関するもの(07-04、16P)、重力変化や地熱地帯での観測への応用(07-17P、18P)、氷河・氷床の消長や運動の観測にGPSを応用したもの(07-09、10、12、13、14P)、南極での定常観測点の新設(07-08)となった。 極域でのGPS観測の話題が全部で7件あり、本セッションの半数近くを占めた。 会場には南極観測の内外の関係者も数多く見られた。 GPS がまさしく global な測位手段であり、極域での種々な研究に不可欠な道具となっていることを示してる。

 なお、地殻変動や水準変化の観測は、GPSのネットワーク観測の一環として行われることが普通であり、本セッションに関係する話題が他のセッション(たとえば1の Permanent GPS arrays)にも散見された。

 Postglacial rebound に関する講演では、数万年スケールの時間変化の他、南アメリカ大陸のパタゴニア地方、および南極半島における最近の数千年の間に数回繰り返された荷重変化に対する、地殻の応答とマントルの粘性係数等についての研究成果の発表(招待講演 07-01)や、フェノスカンジナビア半島における欧州数カ国による rebound および海水準変化の観測プロジェクトの成果発表(07-02)がなされた。

 海面高の測定については、海面で発射されたGPSの電波を衛星から観測することにより測定しようという新しい試みについての興味深い発表があった(07-07)。 この方法が技術的に可能になれば、これまでの TOPEX/POSEIDON に代わるグローバルな海面高の測定手段になる可能性があり、活発な質疑応答があった。 また、この方法は、技術的には衛星からのダウンルッキングによる気象学的観測とも関連しており、同じ著者によるGPS気象学でのセッションの発表もあった。

 極域でのGPS観測では、低温、電力の供給、データの回収方法など、極域特有の困難な問題を多く抱えているものの、氷河・氷床の観測手段としてGPSが有効な観測手段として広く使われており、多くの発表があった。

 各講演の時間は、招待講演を除き概ね15分の割り当てであった。面白い話題や新しいテクニックの紹介があると質疑が長引き、座が盛り上がっているときに話しを打ち切るにはどうしよいうかと、語学に弱い座長はハラハラすることもあったが、幸いにというか休憩時間の前後に1件づつ講演キャンセルがあり、時間の余裕を持てたことは有り難かった。

田村良明


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